hmm, by 東京都美術館ミュージアムショップ | ふむふむ

2026/10/24 10:42

絶版希少本。草間彌生が残した『人魚姫』を、いま改めて

東京都美術館ミュージアムショップでご紹介している、特別な一冊があります。世界的な現代アーティスト・草間彌生が、ハンス・クリスチャン・アンデルセンの名作童話『人魚姫』のために挿絵を手がけたアートブックです。
2015年、デンマークのルイジアナ近代美術館で開催された草間彌生展を記念して制作され、日本語版は世界で3,000冊のみ刊行されました。現在は絶版となっており、新たに手に入れることが難しい希少な一冊です。長らくルイジアナ近代美術館で大切に保管されていた貴重な本書が、ふたたび当店へ届けられることになりました。そして今、この一冊をあらためてご紹介したいと思います。

アンデルセンの物語を、草間彌生が描く

『人魚姫』は、誰もが一度は耳にしたことのあるアンデルセンの名作。しかし、この本で出会う『人魚姫』は、私たちが思い描く物語とは少し違います。草間彌生が描く模様は、海中を漂う泡のようにも、人魚姫の揺れ動く心のようにも見えます。ページをめくるごとに物語の世界へ引き込まれ、恋や孤独、希望、そして運命といったテーマが、草間ならではの感性で浮かび上がります。
『人魚姫』の挿絵に選ばれた作品の多くは、2004年から2007年にかけて制作された《Love Forever(愛はとこしえ)》シリーズです。 草間彌生といえば鮮やかな色彩を思い浮かべる方も多いかもしれません。しかし、このシリーズはシルクスクリーン技法によるモノクロームのドローイング。目や横顔、水玉、波打つ線などのモチーフが、リズミカルに画面いっぱいに広がります。どこまでも広がる反復するフォルムは、『人魚姫』がもつ詩的でありながら、どこか不穏な世界観と美しく響き合います。その線は、ときに人魚姫が暮らす広大な海の世界や、嵐に揺れる波、そして人間の世界への切なる憧れを描き出しています。

芸術家が読み解く『人魚姫』の世界

草間彌生のドローイングは、『人魚姫』の物語を視覚的に表現するだけではありません。アンデルセンの物語を新たな視点から読み解き、童話に新しい表情をもたらしています。そして、アンデルセンの言葉もまた、瞬きをしない瞳や渦を巻くような線、静かに浮かぶ横顔といった草間作品に物語性を与えました。
草間彌生はアンデルセンについて、「アンデルセンは私の心に生まれた夢」と語っていました。その言葉どおり、本書には「童話」と「現代アート」が響き合う世界が広がっています。こうした表現の背景には、草間彌生が長い年月をかけて探求してきた芸術哲学があります。

草間彌生という芸術家

1929年、長野県松本市生まれの草間彌生は、世界を代表する現代芸術家の一人です。幼い頃から幻視や幻聴を体験し、その記憶や感覚を描き続けたことが、後の創作活動の原点となりました。1957年に渡米すると、ニューヨークを拠点にネットペインティング、ソフトスカルプチャー、鏡や電飾を使ったインスタレーションなど、多彩な表現を発表。前衛芸術家として国際的な評価を確立しました。

草間作品を象徴する水玉や網目模様は、単なる装飾ではありません。草間は、単一のモチーフを反復・増殖させることで生まれる、自他の境目が消えていくような感覚を「自己消滅(Self-Obliteration)」と呼び、生涯を通して探求し続けました。
2026年8月14日、草間彌生は97歳で永眠しました。亡くなる直前まで絵筆を手放さず、創作を続けていたことが公式に発表されています。長い生涯を通して生み出された作品は、いまも世界各地で多くの人を惹きつけています。本書『人魚姫』もまた、その歩みのなかで生まれた一冊。アンデルセンの物語と向き合いながら描かれたモノクロームのドローイングには、草間彌生が長年探求してきた反復や増殖の表現を見ることができます。 一冊の本を読みながら、草間彌生という芸術家が残した表現に触れていただけるのではないでしょうか。

本そのものが、一つの作品

この本の魅力は、物語や挿絵だけではありません。 全94ページにわたる内容はもちろん、装丁にも細部までこだわって制作されています。表紙を飾る人魚姫のイラストは、本書のために描き下ろされた特別な作品。
質感豊かなカバーとともに、本を閉じたあともアート作品として楽しめる存在感があります。本棚やお気に入りの棚に飾れば、それだけで空間を彩る一冊。読む時間だけでなく、眺める時間も楽しませてくれます。

大切に保管されていた一冊を、いま日本へ

本書は絶版となっているため、現在、新たに制作される予定はありません。これまで東京都美術館ミュージアムショップでは、限られた数量でご紹介してきましたが、再入荷を望む声もいただきました。そして今回、ルイジアナ近代美術館に大切に保管されていた在庫を、100冊ほど追加で日本へ取り寄せることになりました。

この一冊もまた、彼女が長い生涯をかけて残した表現のひとつです。草間彌生が創作の歩みを終えた今、新たにつくられることのない本だからこそ、そこに収められたドローイングや言葉と向き合うことは、草間彌生という芸術家の生きた証に触れるひとつの機会になるかもしれません。私たちも、その創作への敬意を込めながら、この貴重な一冊を、できるだけ多くの方に届けていきたいと考えています。

ルイジアナ近代美術館のショッパーに入れてお届けします

東京都美術館ミュージアムショップは、日本国内正規販売店の一つとして、本書をデンマークよりお取り寄せいたします。ご購入いただいた書籍はルイジアナ近代美術館のショッパーに入れてお届けします。

草間彌生の世界を愛する方へ。 アンデルセンの物語が好きな方へ。 そして、特別な一冊を手元に残しておきたい方へ。「いつか読んでみたい」「いつか手に取りたい」と思っていた方にも、この機会にぜひご覧いただければと思います。

▼ご予約はこちら

【限定100冊】追加分のご予約に関しまして

追加分は、期間限定でご予約を承ります。限定100冊、先着順での受付とさせていただきます。デンマークからのお取り寄せとなるため、お客様への発送は12月中旬を予定しております。お届けまでお時間をいただくこととなりますが、あらかじめご了承いただけますと幸いです。なお、本国の在庫も日々減少しているため、受注が100冊に達した後、及び受付締め切り後の入荷については、現段階では未定となっております。

予約販売期間:2026年10月25日(日)18時 ~ 11月3日(火・祝)12時
発送日:2026年12月中旬予定 <先着順で順次出荷予定>


※12月中旬より順次発送を予定しております。海外からの輸送状況により、発送時期が前後する場合がございます。配送日の指定は承っておりませんので、お届け日の調整をご希望の場合は、出荷後にお客様ご自身で配送会社へご依頼ください。
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