世界を魅了した日本美術。そのブームのきっかけは、一枚の浮世絵だった?
葛飾北斎の「神奈川沖浪裏」。日本で最も有名な絵の一つですが、実はこの作品、海を越えて海外でも愛されている名画だということをご存じでしょうか。

ロンドンの大英博物館やニューヨークのメトロポリタン美術館、ボストン美術館など、世界の名だたる美術館には、北斎の作品をはじめとして数多くの日本美術が収蔵されています。現在、東京都美術館で開催中の「大英博物館展」でも、日本美術の豊かなコレクションに触れることができます。では、なぜ遠く離れたヨーロッパで、日本美術はこれほど愛されるようになったのでしょうか。その物語は、19世紀後半、日本が開国した時代から始まります。
海を渡った日本美術
日本美術がヨーロッパへ渡った歴史は、江戸時代までさかのぼります。伊万里焼や蒔絵などの工芸品は、オランダ東インド会社によってヨーロッパへ運ばれ、王侯貴族の間で珍重されました。そして19世紀、日本が開国すると、今度は浮世絵が海を渡ります。浮世絵は、当時の日本では庶民が気軽に楽しめる版画でしたが、ヨーロッパではまったく新しい芸術として受け止められました。
歌川広重「東海道五拾三次之内 日本橋 朝之景」1833-34年 東京国立博物館蔵 他
陶磁器の包装紙として使われていた浮世絵を見て、その美しさに驚いたという逸話も残されています(現在では諸説あり)。やがて美術商を通じて本格的に紹介されると、日本美術はヨーロッパ中で大きなブームとなりました。この熱狂は、「ジャポニスム」と呼ばれています。
モネも、ゴッホも、日本美術のファンだった
ジャポニスムに夢中になったのは、美術愛好家だけではありません。印象派の巨匠クロード・モネは、熱心な浮世絵コレクターとして知られています。自宅には200点以上もの浮世絵を飾り、そのコレクションは今もジヴェルニーの家で見ることができます。
ダイニングルームの壁には、モネが収集した日本の浮世絵コレクションが、彼が生前に選んだ配置を再現するように展示されています。現在も歌麿や北斎、広重らの作品を鑑賞することができ、モネが日本美術を深く愛していたことを感じられる空間です。
一方、フィンセント・ファン・ゴッホは、歌川広重の浮世絵を見て強い衝撃を受けます。あまりにも魅了されたゴッホは、「亀戸梅屋舗」や「大はしあたけの夕立」を、油彩でそのまま模写しました。
左:フィンセント・ファン・ゴッホ「梅の花(広重による)」1887年 ゴッホ美術館蔵
右:歌川広重 名所江戸百景「亀戸梅屋舗」 1857年 ホノルル美術館蔵 他

左:フィンセント・ファン・ゴッホ「雨中の橋(広重による)」1887年 ゴッホ美術館蔵
右:歌川広重 名所江戸百景「大はしあたけの夕立」 1857年 ブルックリン美術館蔵 他
弟テオに宛てた手紙には、「日本の芸術を学ぶと、もっと幸せになれる」という趣旨の言葉も残しています。画面いっぱいに広がる大胆な構図や、余白を生かした表現、鮮やかな色彩。浮世絵は、西洋絵画にはなかった新しい視点を、多くの芸術家にもたらしました。
世界が見つけた、日本美術の多彩な魅力
世界を魅了したのは、浮世絵だけではありません。四季折々の自然を優雅に描いた酒井抱一、生命力あふれる鳥や動物を生き生きと表現した伊藤若冲、愛らしい犬を写実的に描いた円山応挙。さらに、大胆な発想で猫や武者、妖怪を描いた歌川国芳や、「画鬼」とも呼ばれた河鍋暁斎は、自由奔放な表現で見る人を驚かせました。日本美術には、繊細な写実、華やかな装飾、自由な発想、ユーモアあふれる表現まで、実に多彩な魅力があります。その豊かさこそが、時代や国境を越えて人々を惹きつけ続ける理由なのかもしれません。
上段:<左>酒井抱一「花鳥十二ヶ月図 七月 玉蜀黍朝顔に青蛙図」1823年 皇居三の丸尚蔵館蔵/<中>伊藤若冲「動植綵絵 南天雄鶏図」江戸時代・1765年以前 皇居三の丸尚蔵館蔵/<右>円山応挙「狗子図」1778年 敦賀市立博物館蔵
左段:<左>歌川国芳「相馬の古内裏」 1844-1846年頃 東京富士美術館蔵/<右>河鍋暁斎「百鬼夜行」 1879年 大英博物館蔵
世界が愛した名画を、暮らしの中でも
美術館で作品に出会い、その余韻を持ち帰る。それができるのが、ミュージアムグッズの魅力です。ブックマーカーや一筆箋、ポスター、御朱印帳、ステンレスボトル、扇子…。毎日の暮らしの中で使うたびに、名画がぐっと身近な存在になります。世界中の美術館で大切に守り伝えられてきた日本美術。その魅力を、今度はぜひ、ご自身の暮らしの中でも楽しんでみませんか。
※当店の浮世絵・日本美術関連グッズは、特別展「東京都美術館開館100周年記念 大英博物館日本美術コレクション 百花繚乱〜海を越えた江戸絵画」〈2026年7月25日(土)〜10月18日(日)〉公式グッズではありませんので、お間違いの無いようご注意ください。