読書の秋。芸術の秋。秋が深まり、過ごしやすい気候の中、公園のベンチで読書を楽しんだり、美術館に足を運んでアートに触れたり、文化・芸術をこよなく愛する人にぴったりの季節ですよね。
現在、開催中の「永遠の都ローマ展」にちなんで、常設ミュージアムショップには、ショップ店員が厳選した多くの書籍が並んでいます。開幕してから約1か月間の、常設ショップの売上ランキングをもとに、店頭で人気の書籍をオンラインショップ用にセレクトしました!展覧会にいらしている生粋の古代ローマ好きの皆さんが、数々の本が並ぶ書籍コーナーから実際手に取ってご購入いただいている人気本ばかりなので、きっと遠方の皆様にも楽しんでいただけると思います。それでは、ご紹介いたします!
1.「ナショナル ジオグラフィック別冊 ローマ帝国 誕生・絶頂・滅亡の地図」
ダントツで一番人気のこの書籍。1,000年以上もの間、地中海世界の覇者として君臨したローマ帝国の、誕生から滅亡までを辿っていく1冊です。大きく掲載された遺跡の写真もとても綺麗ですし、多彩なイラストや図解、20枚を超える地図が、ローマを理解する上でとても分かりやすく、ローマ帝国の歴史を一通り学べる「入門書」としてお求めになる方が多いようです。
また、カエサル・アウグストゥス・ネロなど、古代ローマを語る上では外せない魅力的な人物も多数登場し、読み応えのある詳細な説明は、世界史好きにぴったり。「古代ローマ帝国」を一から学び直したい方、背景にある「歴史」を把握しながら展覧会を楽しみたい方には、こちらがおススメです。
2.「【AERA Art Collection】ローマ帝国 ここがすごい! 永遠の都ローマ」
続いて、ランキング2位なのがこちらの書籍。表紙の「日本の卑弥呼の時代に 水洗トイレを完備した巨大帝国 その面白さに迫る!」の文字に一瞬で惹きつけられませんか??まさに「面白い視点」から「古代ローマのすごいところ」がやさしく解説されていて、「へー!」と思うと同時に、「ねぇねぇ、知ってる!?」と誰かについ披露したくなる、小ネタのような雑学のようなオモシロ情報が満載です。全く小難しくなく、とても読みやすい!
現在開催中のローマ帝国関連の美術展「永遠の都ローマ展」と「テルマエ展」の見どころが徹底解説されているガイド本でもあり、展覧会の予習に、また鑑賞後の復習に、何度読み返しても面白い一冊です。
3.「ナショナル ジオグラフィック 別冊 古代史マップ 世界を変えた帝国と文明の興亡」
「古代史」を「世界の始まり」ととらえると、この上ないロマンを感じ、とても興味が湧いてきますよね。およそ30の国・王朝・地域が解説されている本書は、ローマのみならず、古代エジプト、中国の漢など世界を変えた強国から、古代ギリシャ、インダス文明まで、古代の世界をあますことなく味わうことができます。こんなに多くの古代文明が1冊にまとまってる本はなかなかないので、「古代好き」にはとても魅力的!
入門者にとって、この広い世界の始まりの知識を深めるには、ともすると情報がごちゃ混ぜになって混乱しがちですが、本書のタイトルとして一番の見どころである「時間や空間の流れ・遷移を視覚的にとらえることができる詳細な『歴史地図』」は、短時間で直感的に理解することができ、本当に頭の中が整理されます!「古代好き」「世界史好き」の方には、ぜひおすすめしたい1冊です。
4.「大人の「ローマ散歩」」
ローマの歴史と建築・芸術が堪能できる「絶対訪れたいスポット」が、美しい写真とともに100か所も紹介されていてボリューム満点のガイドブック。マップもついているので、良質な情報と位置情報を照らし合わせて読み込めば、旅行の事前準備としてはバッチリですね。100か所を一度の旅行で回りきるのは至難の業なので、ずっと手元に置いておきたくなるような、ローマ旅行のバイブルになりそうな1冊で、人気の書籍です。
ローマにはロマン溢れる芸術的な建築美が堪能できるスポットがたくさんあり、読めば必ず旅行に行きたくなること間違いなしですが、実際には行けなかったとしても、その美しい写真を眺めるだけで心癒されるのが、この本が人気である所以なのかもしれません。気分転換に、本書の中で美しいローマを散歩してみませんか?
5.「古代ローマ旅行ガイド 一日5デナリで行く」
タイトルにもある通り、本書は「旅行ガイド」ではあるのですが、なんと「タイムスリップして古代ローマを訪れるなら? 」という、私たちが想像するガイドブックの斜め上を行くトラベル・ガイドなのです。「どういうこと?」って思って、つい手に取ってしまいますよね!
イタリアまでの船旅の手配、快適な宿屋探しのコツ、お得なショッピング情報等々、私たちが「古代」と思っている時代を「最新のこと」のように解説する内容が実にユーモラスで、そんな不思議なガイドを、多数のカラー図版とともに存分に楽しめます。
巻末の役に立つラテン語会話集というのも、実に面白い!しかし、コミカルな設定で終わるわけではなく、当時の環境や、人々の生活、そして考え方を知るための良いきっかけとなる、読み応えある1冊になっています。ちなみに、「デナリ」は古代ローマの銀貨の単位で、5デナリはパン20斤分の穀物を購入できる価格だそう。
6.「イタリアの伝統色」
さて、ここからはスタッフ一押し書籍のご紹介!ローマだけでなく、イタリア全般の色彩について詳しく書かれている良書です。
美しい写真で癒される「色」の紀行文
本書は、ルネサンスに代表される美術・建築作品、世界遺産の美しい風景からモダンデザインまで、芸術大国イタリアで生まれた伝統色を、豊富なビジュアルとともに詳しく解説してある、「色の事典」です。前半はイタリアの色彩紀行。後半は色票によるイタリアの伝統色の通観」という二部構成。
前半の色彩紀行は、よくあるガイド本とは違います。著者ならではの視点で、その街から思い起こされる「色」を軸に、街の案内が記されている、ちょっと変わった紀行文です。
例えば、シエナの街の紹介では、この地の土で焼かれたレンガなどが由来の赤みがかった茶色「バーント・シェンナ」に絡め、赤褐色の建築美が綺麗な写真と共に伝えられています。
同じ海沿いの町でも、「ヴェネチア」のブラーノ島の様なカラフルな町並みもあれば、「アマルフィ」や「シラクーサ」の様に、建材の「オフホワイト」が印象的な教会や遺跡が美しい町もあり、「そんな視点で街の魅力を考えたことなかった!」と、読み進める手が止まりません!
実は著者はイタリアの75(!)もの都市を訪れた環境色彩の専門家。よくある旅のガイドブックとは一味違います。街の色名が気になったら後半の色票のページへ…とあちこち拾い読みするもよし、どこから読んでも楽しいです!
現代に続くイタリアの色彩
後半は、色彩や文様の専門家である著書による〈伝統色と色票〉が掲載されています。いわゆる、色見本とその色に関する解説です。この類の色事典は、読み物としては単調で飽きてしまうかも?と不安に思った方もいるかもしれませんが、心配ご無用です!
同じ赤でも微細な違いを「ポンペイの赤」「ティツィアーノの赤」のように、歴史や絵画を引用して説明する文章がおもしろいのですが、「フェラーリ(有名なスポーツカー)の赤」、「オリベッティ(懐かしのタイプライター)」の赤、「アルマーニの青」、「ベネトンの緑」と、現代のファッションやインダストリアルデザインの分野へも視野が広がります。
(色名に限らず多くのものもそうだろうけれど)決まった色名が最初からあったわけでなく、植物や鉱物から色材を作り出していった長い年月の中で、徐々に色名として定着していったのだな、と気付かされます。ルネサンスの画家や徒弟達が、顔料をすり潰して絵の具を作っている姿が目に浮かんで来るような気がします。
また、読み飛ばしてしまいそうだけれど、とても面白くておすすめなのが、同系色の色ごとの小見出しのようなページ。”ローザ(ピンク)”の項では、「18世紀のフランスの宮廷では貴婦人たちの間で一大流行色となる。イタリアではそのようなことは起こらなかったが…」とあり、私の中のロココ美術のピンク色のイメージに納得。著者の頭の中には、語り尽くせなかった知識がどれほどあるんだろう、と感嘆しました!
巻末の色彩一覧にRGB値が記載されているので、この本を読んで気に入った色が、パソコン上で手軽に再現できるのも嬉しいですね。
同じ著書の「フランスの伝統色」や、私たちのhmm,で販売中の「日本の配色事典」等、よく似た色でも全体として醸し出す空気感が違います。眺めるだけでも、じっくり読み比べても楽しそう。絵を描く人はもちろん、そうでなくても、お部屋の模様替えや友人へのプレゼント選びなど、この本で得た知識やセンスが生かせる場面もありそうですね。幅広い層の方々に手に取って頂きたい一冊です。
さて、このセレクトの中に、気になる一冊はありましたか?
展覧会鑑賞後の深掘りとして、展覧会前の予習として、読書の秋・芸術の秋を楽しんでみましょう。