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2023/10/01 12:01

現在、東京都美術館で開催中の展覧会「うえののそこから「はじまり、はじまり」荒木珠奈 展」 。10月9日(月)に閉幕が迫りますが、まだご覧になっていない方にはこの機会を逃していただきたくない! とても素敵な展覧会なのです。

現代アートって難しい?

「現代アート」と聞くと、“難しそう”、“自分には理解できないのではないか”と構えてしまう方もいらっしゃるのではないでしょうか。
抽象的な作品は、どう解釈するのが正解なのか‥と悩むことが多いかもしれません。

しかし、本展は「現代アートを観に行くんだ」と構えなくても、「不思議で面白い体験をしに行く」といった感覚で、ある種のエンターテイメントとして、ぜひ体験していただきたい。一歩足を踏み入れれば、「現代アート」という難しい概念は忘れ、非日常的な空間を純粋に楽しめる時間になるはずです。

荒木珠奈 展の魅力

ちょっとへんてこで、だけれど可愛らしくて頭から離れない、荒木さんの様々な作品。今回多くのオリジナルグッズを制作いたしましたが、事前にグッズをチェックした上で会場内を回ると・・・

手前:《Una marcha de los esqueletos (ガイコツの行進)》2004年 エッチング、アクアチント、手彩色 作家蔵

壁面の作品を見ながら「これはポストカードにもあった!」とか。


《牛レストラン》2001年 木、ペンキ、ボルト 個人蔵

「おお、これが本物か!」と、二重で楽しめることができるかも。そんな中、本展覧会は観るだけではない「体験型」のインスタレーション」が魅力の一つとなっており、その一部をご紹介したいと思います!

「今しか観れない、今しか体験できない」非日常の空間へ

第一章で楽しめるこちらは、紙、セロファン、電球、電線で作られた電灯が、幻想的に暗闇を照らしている作品。電柱から無断で電線をひき、家や屋台の明かりに使っていたメキシコの人々のたくましい暮らしにインスピレーションを得たインスタレーションです。

《Caos poetico (詩的な混沌)》2005年 東京都現代美術館蔵


ここでは、自分の手で電灯を電線につなげ、この空間に明かりを加える体験ができます。子供だけでなく、大人もとても楽しい!



選ぶ電灯も一つ一つが作品となっており、電気が通って初めて「こんな感じに光るんだ」と実感できます。


自分が灯した光が、この幻想的な空間の一部になるのを見ると、感動的ですね。


表裏一体の光と闇の空間

第二章では二つのインスタレーションが待っています。一つは、荒木珠奈さんが幼い頃に住んでいた団地から着想を得た作品。
《うち》1999年


鑑賞者が選んだ鍵は、どこの「うち」の鍵なのか。鍵の❝部屋番号❞をもとに、その「うち」を探します。宝探しのような、ドキドキした気持ち。



鍵を開け、扉を開くと、ほんのりと灯りがともり、温かな家族の物語がみえる作品です。


一軒一軒異なる「うち」の中。その中の様子から想像を膨らませて、自らの感情の中に紡いでいく家族のストーリー。果たして、中がどうなっているか、会場内でご覧下さいね。

そして、このインスタレーションの裏側には、光と対象に共存する「闇」の世界が潜んでいます。
《見えない》2011

壁一面に広がる、無数の黒い物体。東日本大震災による原子力発電の事故をきっかけに、当時の目には見えない不安定感を視覚化した作品です。安心な暮らしとそれを一変させる災害。《うち》の温かな家族の灯りの裏側に広がる闇からは、平穏な日常と災害が常に隣り合わせであることを、伝えています。

実際、その空間に立ってみると、頭上から不安が流れ込んでくるような感覚に襲われます。流れていく平穏な日常が永遠ではないかもしれないことを、ふと立ち止まって考えさせられる場所です。


うえののそこ(底)を巡る冒険

最後に、大きなギャラリー空間に鎮座するその作品は、この展覧会の最大のインスタレーション。
《記憶のそこ》2023年

この東京都美術館がある「上野の記憶」に着想を得て制作された新作です。人の背の何倍もある大きな「中空のかご」は、上野の過去や未来、人々の多様な営みを飲み込み、吐き出すとされています。このかごには実際に入ることができますが、上を見上げると丸い鏡がキラキラ。暗闇の中できらめくその輝きに、見入ってしまいます。


また、会場内では天井から吊るされた鏡に反射した光が、まるで生き物のように動き回っていたり、映像が投影されていたり、ここだけ異世界のよう。

歴史的な出来事が生まれた場所であり、多様な人々の営みを受け入れていた上野の混沌をテーマに作り出されたこの作品。もうここまで来ると、「アートって難しいのでは?」と思っていた方も、硬直的な概念を脱ぎ捨て、この美術館の地下空間に広がる荒木ワールドにどっぷり浸かって楽しんでいるはず。動き回る光をただただ追いかけて楽しむ真っ白な子供のように。

お子様から大人までじっくり楽しめる、摩訶不思議な非日常の空間を、ぜひ堪能してみてくださいね。

展覧会のオリジナルミュージアムグッズも

展覧会を見た後は、ミュージアムグッズで展覧会の余韻を楽しんでみてください。オリジナルグッズは、荒木さんと学芸員さんとともに作り上げた、いわば作品の延長のような品物です。





その他にもグッズがたくさん。ぜひ、店頭またはオンラインショップでチェックしてみてください♪

▶グッズ一覧はこちらをクリック

荒木珠奈 展グッズ 開発の裏側

先日、ミュージアムグッズ開発の裏側に迫る!「荒木珠奈 展プロフェッショナル・トーク」が開催されました。

ミュージアムショップからは、今までのちょっとおかしな開発グッズを紹介したり、偏愛ミュージアムグッズを紹介したり、笑いありの和やかなトークショー。

本展覧会のグッズ開発秘話、ポストカードの印刷で作品の色味を再現する大変さとその過程の印刷サンプルや、マスキングテープがカットされる前の状態、クリアファイルが圧着成型される前の状態や、ブローチ・ピアスの試作品など、みなさん興味津々。

当ショップのInstagramのアカウントより、東京都美術館のアーカイブでご覧いただけますので、どうぞご視聴ください。


特別展のチケット提示でお得に

10月に入り、9日の閉幕まであとわずか!先日開幕した特別展「永遠の都ローマ展」のチケット提示にて、各料金より300円引きになるので、一緒に回ってもいいですね。この機会を見逃さずに、会場内で楽しいひとときを過ごし、芸術の秋を楽しみましょう。


展覧会情報

展覧会名:うえののそこから「はじまり、はじまり」荒木珠奈 展
会 場:東京都美術館 ギャラリーA・B・C
会 期:2023 年 7 月 22 日(土)~10 月 9 日(月・祝)
休 室 日:月曜日
※ただし10 月 9 日(月・祝)は開室
開室時間:9:30~17:30、金曜日は 9:30~20:00(入室は閉室の 30 分前まで) 
観 覧 料:一般 1,100 円、大学生・専門学校生 700 円、65 歳以上 800 円
※高校生以下は無料
※10月1日(日)は「都民の日」により、どなたでも無料。
※身体障害者手帳・愛の手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・被爆者健康手帳をお持ちの方とその付添いの方(1 名まで)は無料
※いずれも証明できるものをご持参ください。
※「永遠の都ローマ展」のチケット提示にて、各料金より 300円引き(1 名 1 回限り、他の割引との併用はできません)
※都内の小学・中学・高校生ならびにこれらに準ずる者とその引率の教員が学校教育活動として観覧するときは無料(事前申請が必要)
主 催:公益財団法人東京都歴史文化財団 東京都美術館
問合せ先:03-3823-6921(東京都美術館)
展覧会公式サイト: https://www.tobikan.jp/hajimarihajimari


作家プロフィール
荒木 珠奈(あらき たまな)Tamana Araki 

東京都出身。メキシコ留学時代に版画の技法に出会い、90 年代から、版画、立体作品、インスタレーションなど幅広い表現の作品を発表。ワークショップを通じて、こどもやメキシコの先住民などさまざまな人々と共同で作品制作も行う。現在はニューヨークを拠点に、自身のペースで活動を続けている。

1970 年 東京都生まれ
1991 年 武蔵野美術大学短期大学部卒業
1993-94 年 メキシコ国立自治大学美術学部/サン・カルロス大学院(聴講生)
1997 年 武蔵野美術大学造形学部卒業(学士)
2004-05 年 メキシコ国立エスメラルダ美術学校(招待作家/ポーラ美術振興財団在外研修員)
現在 ニューヨークを拠点に活動

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