エジプト、ナイル川の流域には
遥か昔、煌びやかな古代文明が確かに存在していました。
古代エジプトは、紀元前数千年の昔から紀元前後まで栄えたとされています。
のちに征服され滅亡しましたが、
ピラミッドや多くの神殿などの遺跡は残り、
眩いばかりの美と神秘の世界が広がっていた痕跡は、
その貴重な出土品により、時代を超えて現代の我々をも魅了します。
当時のエジプトには、多神教として様々な神々が存在していました。
ラー、アテゥム、シュー、バステト…
聞いたことがある名前も多いのではないでしょうか。
エジプトの信仰は、水と太陽を生命の象徴と見なす自然に対する信仰から始まったため、
神々は自然現象を神格化したしたものとして、崇められていました。
神々の行動を記した神話は「エジプト神話」として現在も語り継がれていますが、
古代エジプトの信仰を理解する重要な要でもある一方、
長い歴史の中で様々な変容を遂げ、複雑になっていきます。
複数の神が同一視されていたり、
一人の神が時代や地域により別のとらえ方をされていたりと、
神々の関係は流動的で柔軟、且つ矛盾をはらむものでありました。
それでは、今回のアイテムのモチーフとなった「ホルス」を
紐解いていきましょう。
天空の神 ホルス
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ホルスは、エジプト神話における天空の神です。
また、同時に王権の神でもあり、ハヤブサないしハヤブサの頭を持つ男性の姿で表されます。
ホルスは、生産の神でエジプト最初の王であったオシリスと、
その妻であって妹でもある豊穣の女神イシスとの間に生まれた子供とされていますが、
他にも太陽神ラーの息子との説もあり、
神々の中で特に多様化した神の一つとして、人々からの信仰を集めていました。
父オシリスがその弟である叔父セトにより殺されたので、
のちにその敵を討ち、上下エジプトの王となったという神話が有名です。
初期王朝時代では、現世に生きるエジプト王ファラオは、ホルスの化身とされていました。
ファラオは、ホルス、つまり地上で生きる神(現人神)が、
地上で統治を行うための姿と捉えられていたのです。
しかし、古王国時代になると、
第4王朝のジェドエフラーは「太陽神ラーの息子」を名乗りました。
それにより、ホルスは「ラーの息子」となり、
ファラオは神の化身という思想が崩れたといわれています。
ホルスの目とは?
ホルスの目は、古代エジプトのシンボルです。
古代エジプトでは非常に古くから、太陽と月はホルスの両目(ホルスの目)だと考えられてきました。
やがて二つの目は、
月の象徴としての左目「ウジャトの目」と、
太陽の象徴として右目「ラーの目」を区別するようになります。
左目である「ウジャトの目」は、ホルス神が父オシリスの仇である
叔父のセトを討つ時に失われましたが、
知恵の神にして月の神・時の神であるトート神によって癒され、回復した神話から、
復活のシンボルとされています。
右目である「ラーの目」は、
太陽神ラーが、自分を崇めない人間に復讐するために、
自らの片目をライオンの頭を持つ破壊神にして復讐者であり、王の守護神セクメトにして、
人間界で殺戮の限りを尽くしたため、破壊の象徴とされています。
神話に由来する場面や象徴は、墓、神殿、お守りといった芸術に表れていました。
3,000年もの長きにわたった古代エジプト文明は、
壮大な歴史を歩み、ゆえに今もなお解き明かされていないものもあります。
「この神秘的な時代にはまだ我々の知らない世界があるのではないか…」
神聖な神と信仰の王朝に対する歴史的発見への期待が、
私たちの小さな‘少年心’をくすぐり続けているのかもしれません。